グラインダー調速器

整流子モーターのトライアックスピードコントローラー
プラスチックを研磨したら熱で溶けたのでスピードコントローラーを作る
トライアックのゲートをデジタル制御する
よくあるトライアック調光器のデジタル制御版


2017-01-08

グラインダーはこれ。普通の整流子モーター

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無負荷電流。突入電流はメーターが振り切れる。無負荷ではたぶん1Aも流れていない。目盛が無いので正確にはわからず。このメーターは立てて使うのが正しい。寝かすと精度が落ちる

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回路は今まで作った物の組み合わせ。各回路から使える部分をかき集める。トライアック調光器は中国製が送料込み$2程度、秋月電子のキットは¥600。買ってしまった方が安上がりであるがデジタル制御しておくほうが作業記録をつけやすい。中国製は一番シンプルな回路構成。秋月の物は弱側の性能を改良してある

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回路構想。抵抗値などは後で見直す
上がトランスレス電源、PC817周辺はゼロクロス検出回路、PICは旧型の16F876、速度変更はロータリーエンコーダ。ロータリースイッチにしたいがピン数が足りない。40PINのPICでは大げさすぎる
完成したらスライダックと比較してみる

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2017-01-09

テスト基板。トランスレス電源は既に作った物が有るので除外。集合抵抗も片面基板に不適なので変更。ピン間1本通せば100%自動配線できた。波形を見てみたい箇所に端子をいくつか追加。トライアックと非ゼロクロスタイプのフォトトライアックが無いので部品購入するまで中断

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2017-02-04

非絶縁電源を使うので先に弱電回路を仕上げてソフトを作ってしまう。試作基板なので足を長めに半田付けしてある。試作完了後に高い部品は回収する

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2017-02-05

出力を10%にしたいときは商用電源のsin波形の面積が10%になったところでトライアックをスイッチングさせる。斜線の面積はsinの積分。sinθの積分は-cosθ+1。求めたい物は面積では無くその面積になったときの角度θの方なので逆関数のacosを使う。角度はプログラムで処理するときはスイッチングさせる時間になる。出力を0~1.0(100%)まで変化させたい時の時間は180度の所の時間を1.0とすると acos(1-出力x2)/π。PICのタイマーでゼロクロス点間の時間を計測し式の値を掛けたところでスイッチングさせる。言語にacosが有れば出力変更時に計算。無ければexcelなどで計算してパラメータテーブルにする

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2017-02-06

-cosθ+1のグラフ。時間軸(=角度)を等間隔に刻むと出力はcosカーブで変化する。これだと弱側と強側の変化が小さくなる。このグラフで出力0.2(=10%)の角度は0.644[rad]=36.87[度]。180度で割ると約20%。出力を制御するつまみの回転角とトライアックのON時間を比例させるとつまみを20%回したところでやっと出力10%になる

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acosのグラフ。上のcosカーブを直線y=xを対称軸にして反転させた形状。出力を直線的に変化させたければ角度をacosカーブで変化させる

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ゼロクロス回路の確認。起動時に周波数を計測して50,60Hz双方に対応できるようにする。起動時に1秒だけ周波数を表示

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ゼロクロス信号。上の波形の一部を拡大したのが下の波形。パルス間隔は50Hzなので丁度10msec幅は約75μsecで回路の性能に依存する。オシロスコープ用語で上の主操引をA、下の拡大した波形をBと呼ぶ。A操引の1マスは2msec、Bは50μsec

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ゼロクロス回路のシミュレーション結果とも一致する。マス目の間隔をオシロスコープのマス目と同じにしてある

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2017-02-07

オシロスコープCHOPモードで表示しているので上下の波形の位相は合っている。下がゼロクロス信号。上がトライアック制御信号。出力95%。ゼロクロス信号は変化が遅いがトライアック制御信号はデジタルで立ち上がりが早いので立ち上がり下がり部分は写っていない

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60W電球でテスト。YouTube動画 調光器試作回路テスト。電力比例のacos曲線で制御。acosはメモリーを食うので旧式のPIC16F876ではリンクエラーになってしまうためエクセルで計算してパラメータテーブルにした

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2017-02-08

トランスレス電源と360Wグラインダーでテスト。電源にパスコンを入れないと誤動作する。試作回路にはパスコンは一切入っていない。出力5%で回り始めるが1rpm程度。実用になるトルクがあるのは出力15%から。構想段階の回路図に誤り有り。C2が有るのでゼロクロス回路が動作しない。生基板を使い切ってしまったので届くまで中断。中国製の生基板を試してみたかったのでAliexpressで注文してある。価格は日本製と大差無い。電気的特性が悪い方が試作には都合が良い

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トランスレス電源を追加した基板

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2017-02-18

完成。中国製基板はかなり茶色い。日本製の紙フェノールはもっと白い

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裏はトライアックと電源IC。スライダックの電圧を20V、このコントローローラーの出力電力を20%にしたときはスライダックのほうがはるかにトルクが低い。電力は同じでもスライダックでは電圧が足りない

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電圧と電流を同時計測しようとしたが個別にしか計測できない。2台のオシロスコープを使い共通トリガーで計測しないとダメなようだ。YouTube動画 デジタル調光器最終テスト

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ケースに入れた。裏面は全面ヒートシンク

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最終回路図
・フォトトライアックの型番に誤り有り。正しくはS21ME3
・5V電源はAC100Vと絶縁されていないので
  -ケースに入れて使う
  -プログラムのICSP書き込みは電源を必ず抜いてから行う
・このトライアックの放熱フランジは絶縁されているので直接金属ネジでアルミ板に固定可能
・トランスレス電源を使いたくないときは点線内を5VのAC-DCアダプターなどに置き換える
・ゼロΩの抵抗はジャンパー
・7セグメントLEDは製造終了品。入手不能なのでアノードコモンの別型番に置き換える
・D1,D3はFRD。BAV21はFRDではないが小電力用のダイオードはTrrが速いのでFRD代わりになる。
 但し小電力用のダイオードは一般的に耐電圧が低く電流もあまり流せない。1N4148では耐圧不足
 秋月電子なら ERA32-02 を使う
・B1,B2のブリッジダイオードは何でもよい
・フォトトライアックは非ゼロクロスタイプ
・D2は9V~12Vのツェナーダイオード。電圧がこの範囲なら何でもよい。8Vだと動かないので9Vはぎりぎり
・抵抗は全部1/6W。R6~R8は30kΩ1/6Wではディレーティング不足になるので1/6Wを直列にして熱的余裕を確保している

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回路図など
ファイル ファイルタイプ 添付ファイルの解説
triacsch.png PNG 大きな回路図 上と同じもの
triac_mbasic.zip mikroBasic プログラムソース一式 mikrobasic PRO 60Hzでの動作テストは実施していません
AC100V_triac_rev2_eagle.zip EAGLE EAGLE V4.1.5以上用 回路図+基板レイアウト

2017-02-20

トリマーとボール盤を直結して逆起電力を計測してみた。トリマーは30000rpm回るがボール盤はその1/10が最大回転数

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逆起電力は回転数に比例しているが電圧が少ない。画面中央がゼロボルトなので3000rpmで0.4V程度。永久磁石モーターと違って電源を切ってしまうと磁界がなくなるので発電機にはならないということだ。少し電圧が出るのは残留磁束の影響か

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1420rpm

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3000rpm

2017-02-22

両面基盤にしてみた。1マス1cm。詰め込みすぎの感じがするが必要な絶縁距離は確保してある

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トライアックの発熱確認は既にやったことがあるがこのサイズのアルミ板で連続100%出力なら800Wが限界。トライアックはON時間に比例して発熱するので出力が半分なら発熱も半分になる。ヒーターの場合電熱線が唸ってしまうので実用的では無い。当方が持っている工具で有効なのはグラインダーとトリマー(ルーターの小さいやつ)だけ。調速機能が必要な工具は最初からその機能が付いている

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2017-02-24

半波単位で間引くとヒータが鳴らなくなる。50Hzは点滅して見えない速度の最低周波数なので点滅しているのがわかる。白熱電球で試すとどの出力でもものすごく目障り。ハロゲンヒーターでは
20% 点滅しているのが解るが輝度が低くあまり気にならない。実用的でも無い
33% 点滅しているのが解らない
50% 輝度が高くなり点滅が気になる。一番点滅が気になる
66% 点滅しているのが解らない
80% 点滅が少し気になる
OFFになっている時間が長かったりOFFになる時間間隔が長くなると点滅が気になる

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20%出力

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33%出力

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50%出力

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66%出力

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80%出力

2017-02-25

gootの半田鏝用コントローラーPC-10(現在廃版 現行品はPC-11)も原理は同じ。位相制御方式なので100%出力以外ではコテが「ジー」と鳴く。何故か音が小さいので分解。負荷と直列にコイルを入れて一気に電流が流れないようになっている。それ以外の回路は秋月電子の25Aの物(秋月のトライアック調光器は4種もある)とほぼ同じ回路

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光り物でなければゆっくり制御でもかまわないので半田ごてモードを作ってみた。表示はモーターと同じ5%刻み

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波形。20サイクルを制御周期として5%あたり1サイクルONさせる。この制御方法だとヒーターは鳴かない。光らないヒーターなら間欠制御でも実用になる

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20%出力

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50%出力

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80%出力

2017-02-26

スイッチを追加。RA3は共通ピンタイプの集合抵抗

=====モード切替方法=====
1.スイッチを押しながら電源を入れる
2.エンコーダーを回す
   右でも左回しでも良い
   -0-:
      モーターモード
      位相制御モードなのでヒーターに使うと「ジー」と鳴る
      出力は5%単位で増減
      電源投入直後の出力はゼロ
   HEA:
      ハロゲンヒーターモード
      速い間欠制御
      0-20-33-50-66-80-100 と出力変化 半波単位で出力を間引くので余り細かく出力を制御できない
      ヒーターから音が出ないがハロゲンヒーターのように光る物は少しちらつきが気になる
      電源投入直後の出力はゼロ
   SOL:
      半田鏝モード
      遅い間欠制御
      電球やハロゲンヒーターに使うと調光器では無く点滅器として動作する
      出力は記憶されるので電源を入れ直しても前回使用時の出力になる
3.電源を切るかスイッチを押すと動き出す

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ファイル ファイルタイプ 添付ファイルの解説
triac_mbasic2.zip mikroBasic ソースなど一式 mikrobasic pro 60Hzでの動作テストは実施していません
安いPIC16F883あたりを使いたいモルモット希望者は連絡ください。コンパイルしなおして添付します
AC100V_triac_rev2_FPCB2.zip EAGLE 回路図+基板レイアウト EAGLR4.15以上用

2017-02-26

セラミックヒーター半田鏝の抵抗値は温度によって大きく変化するらしいので確認してみた。加熱前と加熱後でテスターの抵抗値を計測して見ても解るがCTセンサーを使用して流れる電流を計測。ニクロム線も赤熱するまで加熱すると抵抗値が2割程度変化するが半田鏝で使用するぬるい温度ではあまり変化しない

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シャント抵抗は10kΩ

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加熱直後

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約30秒後

2017-02-27

電力モニターで消費電力の変化を見てみると熱くなった鏝先を水で冷やしても直ぐには消費電力が変化しない。鏝先の熱の変化がヒーターに伝わるまでかなり遅れがある。通電30秒程度を100%出力、以降75%出力といった制御でも実用的な制御になる気がする。
「市販品gootのPX-501を開けてみた」
「半田鏝温度調節装置」

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2017-04-11

あと2台欲しいので基板を発注。FusionPCBで100x100mmサイズの基板は10枚で$9.9とかなり安くなっている。但し送料が以前より値上がりしている。送料は約$23

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2017-04-30

基板が届いたので製作開始。ヒートシンクの切り出し

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2017-05-01

完成。クレジットカードより少し大きいサイズ。最終回路図、プログラムはキットの作り方を参照

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裏面は全面ヒートシンク。試作品より小さいので大電流の長時間運転は不可

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