スピコン 制作:2007-11-28〜2007-12-16

今持っているスピコンはニッケル水素&ニッカド用なので電池電圧が5Vに下がるまでモーターを回し続けます。この電圧まで下がるとリチウムポリマー電池は死んでしまいます。そこでリチウムポリマー電池対応のスピコンを作ることにしました。


ラジコン用語ではモーターの回転数をPWMで制御するコントローラーのことを何故かアンプといいます。自動車用がスピードコントローラー、略してスピコンでしょうか? 受信機から送られてくる信号でPWM制御するだけの簡単な仕組みなので作るのも簡単です(簡単なはずです)。今持っているアンプを捨てるのももったいないので、アンプに後付けするリチウムポリマー電池保護回路と、アンプ全部を作ってしまう2方式でつくってみることにします。最初はリチウムポリマー電池の保護機能だけを持った物を作り、徐々に発展させていく予定です。

後付方式の主要な部品はFETと電圧を監視するICの構成になります。このFETは大きいので50A程度流せますが、重くなります。面実装タイプの物を使えば軽くできます。多少効率が悪くても安く作れる方がいいので秋月電子で購入できる部品で設計してみることにします。


ブレッドボードで実験するためにこんなソケットを作った。


まだ間違いあるかもしれませんが、こんな回路を考えてみました。TL431で電池の電圧を検知してFETをON/OFFします。R1、R2の抵抗値を変更すればセル数の違う電池にも対応できます。手持ちのアンプは電池側のプラスとモーター側のプラスが繋がっていましたがマイナス側が繋がっている種類の物もあるかもしれません。ブレーキ付きのアンプ(モーターのプラスとマイナスをショートさせることが出来る物)の場合、この回路を噛ませると、電池が6.5V以下になったときブレーキが効かなくなります。


6.5V付近でON/OFFさせる実験 <−MOVIE(モーターの代わりにLEDを使ってます)

機体にセットして動かしてみた <−MOVIE(電圧とモーターの回転の関係が解りにくいビデオですがブレッドボード上に組んだ回路なので無理できません)

若干のヒステリシスがあるみたいで、電圧が回復してモーターが回りだし、モーターが回ることによって電圧が6.5V以下になってもモーターは止まりません。意図してこのように設計したわけではありませんが、この方が好都合です。

(追記)回路のヒステリシスだと思いましたが、ハーフスロットル状態ではFETがOFFしている間モーターが発電機として機能するので、その電圧が加算されて実際の電池電圧より高く計測されたようです。

完成しましたが... 動かしてみるとものすごく発熱する。


電流を1A程度にして。ドレインとソースの電圧を測ってみた。約6Vある。??? 電源電圧は約7Vなのでモーターを回すための電力はほとんどFETが熱に変換してしまっていると言うことだ。FETの使い方がたぶん間違ってる。FETが飽和していれば単なるスイッチになるはずなので、たぶん飽和してない。もしかして出来ないことをやろうとしているのか? アンプがOFFしているときはドレインもソースも宙ぶらりんっていうのはいかにもまずい回路だが、そうするとまずい理由もわからない。


うまくシンクロしていないが出力を上げるとONになっている時間が長くなる。PWMの周波数は約2kHz。


アンプ無しのFETだけでモーターを回してみた、これでも熱くなる。


誘導負荷だからダメなのか?と思って3Ωのセメント抵抗で試してみた。これでも熱くなる。オン抵抗は0.02Ωのはずなので本当にONしていたら熱くなるはずはないのだ。そこでしばらくデータシートとにらめっこ。よく見るとゲートとソースの電圧差が10Vの時に0.02Ωと書いてある。いろいろ実験してみるとゲートソース間の電圧差が大きいほどオン抵抗が小さいみたいだ。 ...ということはFETの選択ミス。実験に使ったFETは比較的高電圧で使用する物ということになる。FETはこれしか買ってなかったので買い出しに行くまでしばらくお預け。
ちなみに回そうとしているモーターは7.2Vが定格で、このとき流れる電流は6〜7Aになる。つまり抵抗は約1Ω。FETのON抵抗は0.01Ω以下であって欲しい。


いろいろ買ってきました。


やはりオン抵抗が問題のようです。熱くなることに変わりありませんがFETでのロスは少なくなりました。問題はそれでもヒートシンクが必要になるほど発熱することです。小さな飛行機にヒートシンクは積みたくありません。


ドレイン−ソース間の電圧 <−MOVIE(フルスロットルだとFETが完全にONして電圧が下がってます)

使っているスピコンはこれ。クラフトルームのSPEED XXシリーズ。熱収縮チューブが被さっていて回路がよく見えないので...


取り外してみました。


FETはInternational RectifierのIRF7805です。2個並列接続してオン抵抗を減らしています。8本足ですが、ドレインが4本共通、ソースが3本共通、ゲートが1本というピン配置です。


かなり低抵抗ですが、秋月電子で買ってきたFETの方がデータシート上は抵抗が小さいのです。何故発熱するのでしょう?


反対側はPIC12C508と5Vのレギュレターが主要部品です。レギュレターはL4941Bというのが型番です。STマイクロ製です。
データシートを見ると低ドロップタイプのもので、電池電圧が5.45V以上あれば出力電圧5Vを維持できます。


ここまで、回路が判ってしまうと変なアダプターを作るよりバッテリーの電圧を監視する仕組みに小細工した方がずっと簡単になります。理屈は...
 ・コントローラーにPICを使っているが12C508にはA/Dコンバータが付いてないので、
  何らかの仕組みでバッテリの電圧が5V以下になったことを検知しそれをデジタル出力している箇所があるはず。
 ・デジタル出力するためには半導体回路が必要になるがFET,電源レギュレタを除いたものは4つ上の写真のBRという刻印のある3本足の物しかない。
  これで電圧を検知していることは間違いない。
 ・3本足の付近の回路を調べれば検知する仕組みがわかる。
という具合です。

テスターで導通している箇所を調べていくと、回路はこんな感じでした。3本足の物はトランジスターのようです。電池電圧が十分高いときはベースの電圧が0.6V以上あるのでトランジスターがONしてコレクタが約0Vになり、電池電圧が低くなりベース電圧が0.6V以下になるとトランジスターがOFFしてコレクタに電源電圧が出力されます。コレクタはPIC12C508に繋がっています。リチウムポリマー電池対応にするためには33kΩの抵抗をもっと大きくすればOKです。33kΩの抵抗は4つ上の写真の左上にある黒い「333」と小さく書いてある部品です。


実際にモーターがOFFする電圧を調べました。5Vではなく3.77Vとかなり低圧です。


ついでに波形も見てみました。ドレイン−ソース間の電圧です。電源電圧は7.2V。画面下側の点線部分が0Vです。1目盛りは5V。FETがONしている間はドレイン−ソース間は、ほぼ0Vになっています。FETがOFFしている間はモータが発電機になっているため電源電圧より高い電圧が計測されています。


抵抗をつけ直します。計算上60kΩとなりましたがハーフスロットル状態とフルスロットル状態では状況が違ってくるはずなので仮付けして実験します。抵抗を2本使っているのは60kΩちょうどという抵抗が存在しないためです。最終的には47kΩ+10kΩにしました。これで、ほぼ6.0V以下になるとモータがOFFします。


半田付けし直して、熱収縮チューブを被せてリチウムポリマー電池対応完了です。ぐるっと一回りさせたのはFETの高さより抵抗の方が高さがあるため放熱用のアルミ板の取り付けの邪魔になるためです。


改造するほうがずっと簡単なので後付の回路をつける方式はボツにします。次はスピコンそのものを作ります。


5Aタイプの物もリチウムポリマー電池対応に改造します。


10Aのタイプとほぼ同じ構成です。FETが1つ少ないのと、BEC用のレギュレターがちょっと小さい物になっているだけのようです。


改造前の状態を計測しておきます。3.9VでモーターがOFFになります。


抵抗値がちょっと違います10Aのものは33kΩでしたが、これは36kΩです。抵抗は左下の隅にあるものです。


こんなふうになりました。抵抗は2個直列接続しています。47kΩ+12kΩ=59Ωです。


熱収縮チューブが黒い物しかなかったのでこうなりました。今度は6.05VでモーターがOFFになります。



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